2017年ペナントレースの波(セ・リーグ編)/鳥越規央の野球視角

2018年1月10日更新

今回は前回に引き続き、統計学で用いられる「移動平均」で2017年のペナントレースにおけるセ・リーグの各チームの「調子の波」をご覧いただきます。

移動平均とは大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るために算出する統計指標です。株価の大まかな変動を捉え、売買のタイミングを計る際によく使用されます。





この移動平均を使って,ペナントレースで各チームがどこで波に乗れたかを計ってみましょう。

以下のグラフでは、チーム得点と失点の5試合移動平均を折れ線で表し、

得点>失点の期間はレッドゾーン、

失点>得点の期間はブルーゾーン

として表しています。

広島カープ



今年も打撃がセ・リーグの他チームとは異次元の成績で、昨年の数字を超えるチーム打率 .273、チームOPS 0.769をマークしています。

開幕投手を務めたジョンソンがいきなり戦線離脱というアクシデントに見舞われながらも、2戦目から1分を挟んで10連勝。その後4月15日から5月21日までで14勝18敗と一進一退を繰り返します。その時期のグラフはとても細く、得点と失点の差がほとんどなかったことを示しています。ですが、これを除けば、得点が失点を大きく上回る状況で埋め尽くされ、結局勝利数は去年より一つ少ない88勝でしたが、勝率6割3分3厘はチーム史上最高となりました。

昨年はジョンソン、黒田博樹、野村祐輔が先発の三本柱として通年で活躍しましたが、今年は通年でローテーションを守ったのは野村と大瀬良大地の2人のみ。ですが、岡田明丈、九里亜蓮、床田寛樹、福井優也、中村祐太、薮田和樹といった若い投手陣が入れ替わり立ち替わり先発をしっかり勤めてきました。

チームQS率58.04%はリーグ2位の好成績です。特に薮田は開幕当初は中継ぎとして2ヶ月で23試合登板したのち、5月30日からは先発ローテーションという急な配置転換にもかかわらず、QS率80%で12勝(トータル15勝)という貢献を果たしました。

打撃陣では1番田中広輔、2番菊池涼介、3番丸佳浩は通年で固定、4番には鈴木誠也が入り、盤石の上位打線が形成されていました。8月に鈴木が骨折で戦線離脱しても、9月以降4番を任された松山竜平がOPS 1超えの活躍でしっかり穴を埋めており、チームの打撃能力の高さを見せつけました。さらには安部友裕、小窪哲也、西川龍馬といった若手も台頭し、下位まで気の抜けない打線が形成されていました。

昨年についても言えるのですが、大きな故障者が多発していないことが現在の広島の原動力と言えるでしょう。勤続疲労による故障などが出てこない限り、来年も優勝候補の筆頭に挙げられることでしょう。

阪神タイガース



今季は78勝と昨年よりも14の勝ち星を上乗せしました。その原動力は打撃力の向上です。チーム打率は.245から.249と微増ではありますが、チームOPSは0.662から0.698、1試合平均得点は3.54から4.12と上昇させました。

オリックスから移籍の糸井嘉男がチーム最高のOPS 0.829をマークし、得点力増加の大きな要因となりました。また福留孝介、2,000本安打を達成した鳥谷敬といったベテラン陣の高出塁率もチームを牽引しました。そして20本塁打の中谷将大、後半戦で7本塁打のルーキー大山悠輔の和製大砲候補も頭角を現してきました。来季はここに韓国KBOで2季連続30本塁打以上を記録した右の長距離砲ロザリオが加入します。さらなる得点力アップが期待されるところですが、ベテラン勢が来季もこのレベルの出塁を重ねることができるかどうか。そして北條史也、高山俊などの若手の底上げも懸念材料です。

グラフはシーズン通じて細い状態が続いています。得点と失点の差がそれほどなく、うまい噛み合わせで星を拾ってきたことの表れとなっています。つまり得点力は上がったけど、失点も増えてきていることも事実です。特にこれまで阪神を支えてきた先発投手陣なのですが、今季のチームQS率は47.55%とついにリーグ最下位となってしまいました。秋山拓巳が今年通年でローテーションを守りQS率72%で12勝をマークしましたが、昨年ローテーションを務めた藤浪晋太郎、能見篤史、岩禎祐太といった面々が成績を落としています。

ただ、桑原謙太朗、ドリス、マテオの盤石の救援陣を形成し、接戦をものにしてきました。救援防御率は2.68とリーグ最高です。

来年は先発投手陣の再構築が大きな課題となりそうです。メッセンジャー頼みのローテーションから脱却できるのでしょうか。

そして地味ながら大きな懸念が守備力です。FA移籍で大和が抜けました。彼の守備での貢献は高く、その穴を埋める材料が見つかっていない状況です。それが改善されない限り投手陣を守備で足を引っ張ることは目に見えていますので、それを補う攻撃力の補強ができるのかが、優勝戦線に残る鍵となります。

横浜DeNAベイスターズ



2番梶谷隆幸、8番投手とセイバーメトリクス的にも興味深い打線の組み方で戦ってきたベイスターズ。交流戦終盤からオールスター前まで期間で作った貯金がシーズンでの貯金となり、2年連続でAクラスを達成しました。

7月から8月にかけてのグラフの細さは接戦の連続を物語っていますが、9月に入りシーズン終盤は、8勝2敗1分けのラストスパートを見せ、巨人を振り切りました。そしてこの好調を堅持したままクライマックスに突入。短期決戦に見合うラミレス監督の采配も功を奏し、阪神、広島を破って1998年以来の日本シリーズ進出を果たしました。

打線は、筒香嘉智、ロペス、梶谷を中心として、ここに桑原将志、首位打者を獲得した宮ア敏郎が加わった強力な上位打線が形成されました。ただ広島との違いは下位打線の層の薄さにあるので、柴田竜拓、細川成也、乙坂智といった若手の成長が来季のカギを握ることでしょう。

投手陣に関しては先発投手陣の数は揃いつつあります。あとは全体の底上げにかかっています。そして何よりの懸念材料は救援投手陣。特にクローザー山ア康晃の勤続疲労は、今季のクライマックスシリーズ、日本シリーズで顕著に表れてしまいました。日本シリーズ第6戦での内川に本塁打にされた投球など制球の甘さが指摘されています。

それが改善されれば、来季の優勝候補の筆頭に挙げても良いと考えています。(キャンプの出来次第ですが)

読売ジャイアンツ



好不調の波がはっきりとわかるグラフです。前半と後半ではまるで別チームのような状況を示しています。

今季は球団ワーストの13連敗、11年ぶりのBクラス転落を記録するなど、勝ち星に恵まれなかった巨人。ただ、菅野智之、マイコラス、田口麗斗の3本柱は、QS率も高く、2桁勝利と結果を残し、通年でチームに貢献しました。さらには後半からローテーションを守った畠世周の存在も光りました。先発投手の防御率 3.26、QS率 58.74%はいずれもリーグトップです。

ただ、今季前半の巨人の得点力不足は深刻でした。その状況については以下のリンクに詳しく記しています。

現代ビジネス:「今年の巨人がこんなに弱い理由」を統計学で解明してみた

後半戦は打線の組み替えなどもあり、チームは結局4つの勝ち越しでシーズンを終えました。ただDeNAの勢いに押され、初めてクライマックスシリーズ進出を逃すことになったのです。

来季ですが、QS率 81.5%のマイコラスが抜けることになりました。それを西武でQS率 58.3%だった野上亮磨がその役割を果たすことができるのでしょうか。

そして中日から本塁打王ゲレーロが移籍し、長打力の補充を図ります。ただその前後を打つ選手とのつながりが分断される打線を組むようでは、また今季前半の二の舞になることでしょう。しっかりと得点を積み重ねられる打線の再構築に期待です。

中日ドラゴンズ



シーズンを通じて青い状況です。そして全体的に細いグラフとなっています。昨年からそうなんですが、チームの投打の噛み合わせがうまくいってないことがこれに現れています。

昨年チームの打力と守備で中心となっていた平田良介の離脱は大きな影響を与えてしまいました。またビシエドも精彩を欠いたシーズンとなりました。これによる得点力の減少は計り知れません。

ショートで141試合出場し新人王を獲得した京田陽太の加入は明るいニュースでした。ただ他の若手野手の台頭が待たれるところです。

投手陣ですが、前半戦ローテーションの中核を担っていたバルデスとジョーダンが後半戦、ほぼ登板することができず、やりくりが大変な状況になっていました。また開幕当初は先発を任されていた又吉克樹が、途中から中継ぎに役割変更されるなど、チームの投手運用にも粗が目立ちました。

来季は主砲のゲレーロ、先発のバルデス、ジョーダンが抜け、大きな穴となってしまいました。その穴を新戦力で埋めるのか、若手の台頭で埋めるのかのビジョンは明確にされていません。

まさかその穴を松坂大輔で埋めようとは思ってないでしょうが、中日フロントの明確なチーム強化ビジョンを提示が待ち望まれるところです。

東京ヤクルトスワローズ



ゴールデンウイークあたりを除いては、すべて真っ青な状況。とにかく投打の戦力が怪我や不調で整わないシーズンとなってしまいました。健康を売りにしているヤクルト本社の株主総会では、この状況に関する説明責任を果たせと言われたとか言われないとか。

得点パークファクターは1.41とリーグで最も得点の入りやすい球場を本拠地にしているにもかかわらず、今季の1試合平均得点は3.31とリーグ最下位。得点力不足が顕著に現れています。平均失点も4.57でリーグ最下位。

来季への明るい材料は、広島から石井琢朗打撃コーチ、河田雄祐外野守備走塁コーチを招聘したこと。若手戦力の向上に一役買うことができるのか見ものです。またけが人が復帰すれば、もともと2015年優勝に貢献した戦力は多く存在するので、ともすればダークホース的な役割を果たす可能性もあるかも。ただそれは先発投手陣の構築があってのことでしょうが。

今日の試合速報

関連記事