2017年ペナントレースの波(パ・リーグ編)/鳥越規央の野球視角

2017年12月27日更新

今回は統計学で用いられる「移動平均」で2017年のペナントレースにおけるパ・リーグの各チームの「調子の波」をご覧いただきましょう。

移動平均とは大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るために算出する統計指標です。株価の大まかな変動を捉え、売買のタイミングを計る際によく使用されます。





この移動平均を使って、ペナントレースで各チームがどこで波に乗れたかを計ってみましょう。

以下のグラフでは、チーム得点と失点の5試合移動平均を折れ線で表し、

得点>失点の期間はレッドゾーン、

失点>得点の期間はブルーゾーン

として表しています。

福岡ソフトバンクホークス



昨年は優勝した一昨年と遜色ない成績を残しながら優勝を逃してしまったソフトバンク。しかし今年は昨年以上のハイペースで勝利を重ね、球団史上最速Vで優勝を決め、トータル94勝での優勝は、1955年の南海ホークス(99勝)、1956年の西鉄ライオンズ(96勝)に次ぐ成績となりました。

4月は14勝12敗と5分の成績でしたが、5月はチーム防御率3.78と崩れながらも、チーム打率 .301、チームOPS .877という攻撃力でカバーし、首位争いに加わります。

8月1日、サファテがオリックスのロメロにサヨナラ本塁打を浴びたとき、チームは3戦連続で先発投手陣がクオリティスタート(QS)を達成できておらず早い回で降板し、救援陣に負担をかけていた状況でした。

そのため「先発がこれだけ早いイニングで降りたら、僕ら救援陣にツケが回ってくる。先発を信じて使うのも一つだと思う。先発投手にはもっと感じ取ってほしい」というコメントで先発投手陣に檄を飛ばしました。

実は今年のソフトバンクのQS率は49.65%でリーグ5位の成績です。救援陣が磐石だからこその率なのでしょうが、今年の優勝は、強力な打線と救援陣で培われたもので、ある意味2015年のヤクルトの状況に似ています。今年のMVPにサファテが選出されたのは、当然のことと言えるでしょう。

それにしても、スターティングメンバーの顔ぶれを見ると、内川、デスパイネ以外は、すべてソフトバンク生え抜きの選手。3軍設置による育成を重視した経営方針がここにきて身を結ぼうとしています。データを駆使し、さらにはAIを導入した練習施設も整えています。投資が勝利に結びついている好例と言えるでしょう。

埼玉西武ライオンズ



前半戦は半月ごとに好不調の波が入れ替わっているという不思議な状態が続いていましたが、後半戦に入ると一気に好調の波が押し寄せました。

その原動力の一つが山川穂高のバッティングと言えるでしょう。7月に復帰した山川は代打で結果を残すと、11日からスタメンに名を連ねます。交流戦以降、打率 .321、OPS 1.136、本塁打21の大活躍でチームを牽引していきます。7月21日から13連勝を達成、混沌としていたAクラス争いに決着をつけ、クライマックスシリーズ進出をこの時点でほぼ決定づけることになりました。

ただ優勝争いという点では、グラフの後半の大きな青い部分に示されている通り、8月22日からのソフトバンク3連戦で、0-7、0-9、1-10と見事に玉砕。

エースの菊池雄星は、QS率 88.64%、防御率 1.97、奪三振率 10.41の好成績でチームに貢献しました。ただ惜しむらくはソフトバンク戦ではWHIP 1.62、防御率 7.97とあまり成績を残せていません。援護率も1.64だったため0勝4敗という結果になりました。

ルーキーの源田壮亮の加入は、2番打者とショートの固定というチームの懸案を解消しました。広い守備範囲と堅実なハンドリングで魅せる守備や、勝負強いバッティングはファンを魅了しました。それが大きくグラフの変動に影響するわけではないでしょうが、今後のチームの底上げには不可欠な戦力となっていくことでしょう。彼の起用を進言したとされる橋上秀樹作戦コーチの眼力もさることながら、彼の意見を組み上げ、采配に取り入れようする姿勢を持つ辻発彦監督の今後のチーム作りにも注目です。

東北楽天ゴールデンイーグルス



今季の楽天は、前半戦、1番茂木英五郎、2番ペゲーロの上位打線が好調で、さらには下位打線も出塁率が高かったため、下位打線で作ったチャンスを上位でものにし、昨年の得点力不足を見事に解消しました。

また美馬学、岸孝之、則本昂大の先発3本柱が高いQS率でしっかりと先発としての役目を果たしていました。

しかし茂木、ペゲーロが怪我のため戦線を離脱すると、グラフがあっという間に赤から青に転じ、全く違うチームであるかのような様相になってしまいました。

交流戦終了後、得点と失点の差が小さく、細めのグラフとなっていたため、その噛み合わせが狂うと、一気に不調の波に飲まれてしまうのです。

結局、西武にも抜かれ3位となり、クライマックスシリーズ地元開催は達成できませんでしたが、ウィーラーの好調に助けられファーストステージを突破。ただ、ソフトバンクの牙城を切り崩すまでには至りませんでした。

しかし、楽天もデータやVRを駆使した運営により、徐々に戦力を整えている様子が伺えます。

オリックスバファローズ



まず4月と5月で全く違う様相を呈しています。ロメロがいるといないでこんなにもチーム状況が変わるのかといった様相でした。

後半戦からは、得点と失点の差が少なく綱渡りの状況でした。一つ噛み合わせが違えば、いかようにも転がる感じでチームも大きく負け越さない程度に勝っていくといった感じでした。3位とのゲーム差が10、5位とのゲーム差が10という「万年4位」の状態でペナントを進めたせいか、正直特筆すべき成績が見当たりません。

通年活躍したT-岡田や、規定打席未到達ながらOPS 0.9越えの吉田正尚、そして6月9日の中日戦で打球をスタンドインさせながらも本塁を踏み忘れ、来日第1号が幻となるも、9月29日のロッテ戦で、NPB通算10万号となるホームランでその伏線を回収したマレーロ(OPS 0.925)が来季の打線の中心となることでしょう。最近のデータ野球では彼らが上位に来る打線が組まれることが多いのですが、果たしてどうなることでしょうか。

先発は西、金子、ディクソン、松葉に加え、ルーキーの山岡泰輔がローテーションを守り、チームQS率も50%を超えています。

このように投打の役者は揃っているのですが、その戦力を効果的に使えていないチームの現状をいかに打破していくかが今後のチーム浮上の鍵となることでしょう。

北海道日本ハムファイターズ



昨年、投手として10勝、打者としてOPS 1.004の成績を残した大谷翔平という戦力が前半戦に機能しなかったことがここまでチームに悪影響を及ぼすのかと思わせるくらいの低迷ぶりでした。5月まで打率4割をキープしていた近藤も腰のヘルニアで戦線離脱。レアードを7番に置く余裕もない打線の組み方で得点力が上がりませんでした。主力がけがで抜けても若手が補うというスタイルでここまでチーム作りをしてきた日本ハムですが、大谷、近藤の穴は相当大きかったようです。

ただ、この低迷を一人の監督の責任とせず、フロントが「これは戦力を整えられなかった我々の責任。栗山監督には来季も采配をお願いします」と明言したことは好感が持てます。また近藤のヘルニアが発症したときも、すぐに手術という手段を選択し、後半戦から復帰させるプランを実行したフロントの英断も見事でした(結果、侍ジャパンにも選出され結果を残しました)。来年は史上初の4割バッター誕生も期待できることでしょう。

なお、全くの余談ですが、今年大谷は8本のホームランを放っていますが、そのうちの3本を球場で生で見ることができました。

(4/5 マリーンズ戦、9/8 ライオンズ戦2本)

千葉ロッテマリーンズ



今年に関しては、すべてのデータがリーグ最下位という状況。唯一良かったのは、併殺打数の少なさ。しかしこれは裏を返せば、出塁数そのものが少なかったためのもので、褒められる類のものではありません。

来季から、井口資仁が現役を退き、即監督に就任して采配をふるいます。そのための下支えをフロントがどこまでできるかが課題となることでしょう。

ようやくZOZOマリンスタジアムにもトラックマンの導入がなされるとの報道があり、実現すればパ・リーグ全球団でデータのやり取りが可能となります。このデータをいかに活用し、勝てるチームに変貌させることができるのか、その手腕が試されることとなります。

次回はセ・リーグ編をお届けします。

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