大逆転のセイバーメトリクス (その1)/鳥越規央の野球視角

2017年11月1日更新

今年のプロ野球では、長期の連敗や大逆転の試合など、数年に1度起きるかというようなレアケースが多く発生しました。今回から2回にわたり、セ・リーグで起きた2つの大逆転劇を勝利確率の推移を計りながら振り返ってみましょう。今回は5月6日に甲子園で行われた阪神vs広島8回戦を振り返ります。

この試合、阪神先発のルーキー福永春吾に広島打線が襲いかかり4回までに6得点、替わった松田遼馬からも3得点で、5回表までに広島が9-0の大量リードを奪いました。

ここまでの阪神の試合における勝利確率の推移を見てみましょう。





5回表終了時点で阪神の勝利確率は1%を下回っていました。このくらいの点差がつけば逆転が起きるのは215試合に1回あるかないかくらいの確率になるわけです。しかしここから虎の逆襲が始まります。

5回裏に梅野隆太郎のタイムリーヒットで1点返して1-9にすると、6回裏には糸井嘉男の内野ゴロの間に1点で2-9、鳥谷敬の内野安打で1点追加、3-9。広島先発投手の岡田明丈のワイルドピッチで4-9になった後、梅野が四球を選んで満塁。そこで原口文仁が押し出し四球で5-9。さらに高山俊がタイムリー3塁打を放ち、8-9と1点差に迫ります。そして7回裏には、2アウト1、2塁からルーキー糸原健斗がライトへのタイムリーで9-9の同点に追いつくと、続く梅野がタイムリー3塁打を放ち、とうとう11-9と逆転に成功します。8回裏にも追加点を入れた阪神が結局12-9で勝利したのです。

この後半戦での勝利確率の推移を見てみましょう。





この試合のヒーローインタビューのお立ち台には、高山、糸原、梅野の3選手が立ちました。この3選手の活躍ぶりを、どれだけ勝利確率を上昇させたかを示すWPAで評価してみましょう。



高山と梅野はどちらもタイムリー3塁打を打っていますが、6回4点ビハインドから1点ビハインドに詰めた高山の3塁打のWPAが0.2098で、7回同点から2点差をつける梅野の3塁打のWPAが0.3231と約0.11ポイント高山より上回っています。同じ3塁打でもシチュエーションが違えばその価値が変わるということが数値に表れています。

そして糸原の1点ビハインドから同点に追いつくタイムリーヒットのWPAが0.2537となっています。

勝利確率はイニング、点差、塁状況、アウトカウントなどさまざまな状況で刻一刻と変化しており、勝利確率が大きく上がりやすい状況で活躍をするとそれが大きなWPA となって評価の対象となるのです。このWPAが大きな選手がその試合で活躍したともいえ、ヒーローインタビューの対象となりやすいのです。

その日の安打数で言えば、高山、梅野は2安打で糸原は1安打ですが、実は鳥谷が3打数2安打1四球で糸原より出塁しています。ですが、鳥谷のこの試合でのWPAは0.1316と糸原より小さかったのです。

それにしても6回、7回の猛攻にはホームランこそなかったものの、2本の3塁打、そして5つの四死球が絡んでおり、制球を乱した投手の交代を引っ張ったことが大量失点につながったと考えられます。

また最終回、1死3塁の状況で田中広輔が、ピッチャーのドリスにプレッシャーをかけようとしたのか、走塁を仕掛けたところアウトになりました。

これによって阪神の勝利確率が91%から97%に上昇、WPAを0.06ほど引き上げてしまう大きなプレーとなりました。

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