逃げ切りのセイバーメトリクス 6回終了時リード時の勝率について/鳥越規央の野球視角

2017年10月10日更新

9月16日、福岡ソフトバンクホークスが2年ぶり20度目のリーグ優勝を果たしました。これは2年前に自身が作ったリーグ最速優勝日記録を更新する最速優勝でもあったそうです。

さて、ソフトバンクの優勝を語る際に出てきた記事としてこういうものがありました。

「6回終了時にリードしたとき、74勝1敗」

勝率にすると実に0.987と驚異的な数字となっています。10月1日終了時点では、76勝3敗(勝率0.962)ですが、チームの強さと6回終了時リードのときの勝率に相関はあるのでしょうか。

10月1日時点での各球団の6回終了時リードのときの勝率を見てみましょう。

パ・リーグ



セ・リーグ



6回終了時リードをしているときの勝率が9割を超えるチームが6チームもあります。それだけ現代のプロ野球においては、中盤までにリードしておくとかなり有利な試合展開に持ち込めるということがわかるデータです。

実はソフトバンク以上の勝率を残しているチームがあります。西武が67勝2敗で勝率0.971、巨人が56勝2敗で勝率0.966となっています。

西武はトータルの勝率が0.569で、これは過去10年のパ・リーグの優勝チームの勝率と比較しても6番目の高さに匹敵するものです。それだけの強さを発揮し、さらに言えば、6回終了時リードしていたときの点差の平均を見てみると

ソフトバンク 3.01

西武 3.41

と、西武の方が多くリードした状態で6回を終えていることがわかります。

もっと細かく見てみましょう。



6回終了時で、4点差以上つけている割合がソフトバンク30%に対し、西武は40%となっており、大きなリードをつけている確率が高いことを示しています。

セイバーメトリクスでは、WE (Win Expectancy) という指標があります。これは、試合中のある状況におけるチームの期待勝率を表します。6回裏終了時点での後攻チームの点差別WEは以下のようになります。

6回裏終了時の後攻チームの点差別WE



これまでのNPBのデータから算出されたWEでは、6回終了時1点差のリードであれば71.93%の期待勝率確率があり、点差が広がるにつれてその値は大きくなり、4点差では95.66%、10点差だと99.96%なるのです。

ということは、7月26日に神宮球場で行われたヤクルトvs中日15回戦では、6回終了時、中日が10-0と10点リードしていましたが、その後、ヤクルトの猛反撃に遭い、10-11と逆転負けを喫しています。

これは0.04%(約2262分の1)でしか起きない奇跡の試合だったということになります。

では、このWEとソフトバンク、西武のリード分布から、今年の6回終了時リードでの期待勝利確率を計算してみますと、

ソフトバンク 0.8572

西武 0.8809

となり、今季のデータから算出された期待勝利確率から見ても、西武の方が高くなっており、それが実データに反映された形になりました。

さて、巨人の6回終了時リードのときの勝率は、ソフトバンク、西武に匹敵するほどの高さとなっています。これはマシソン、カミネロといった救援陣だけでなく、菅野、田口の完投能力の高さも要因だと言えるでしょう。6回終了時のリード点差の分布は以下のとおりです。

平均点差 3.21

今年は得点力不足によりけた得点も3試合しかなく、6回終了時の最大点差が8という巨人でしたが、ここから算出される6回終了時リードのときの期待勝利確率は0.8820と両チームを上回ることがわかりました。つまりこれも実データの裏付けとなっているのです。

それにしても、6回終了時にリードしている回数を見ると、

ソフトバンク 79

西武 71

と、シーズンの半分ほどをリードして6回終えているのに対し、

巨人 58

と大きく水をあけられています。

それだけソフトバンク、西武には序盤中盤で相手先発投手を打ち崩す攻撃力があったことの証左です。

つまり、終盤のリードをキープする力ももちろん大事な要素ではありますが、それ以上にしっかり序盤でリードを蓄える攻撃力があることがチームの強さに大きな影響を与えるということがいえるのではないでしょうか。

セイバーメトリクス的9月の月間MVP

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打者部門
セ・リーグ  上本博紀(阪神)
OPS 1.186(2位)
本塁打 3(8位)
打率 .453(1位)
長打率 .641(2位)
出塁率 .545(1位)
RC27 12.69(1位)
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今月のセ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。



松山は規定打席に達していませんが、規定打席の1/2以上を対象としたチーム内ランキングで見ると、打率 .326はチーム1位、RC27 7.26は鈴木誠也、丸佳浩に次ぐ3位。鈴木誠也が抜けた穴を埋めて有り余るほどの活躍で、9月9連勝を含むラストスパート、そしてチームの優勝に大きく貢献しました。

それ以上に活躍したのが、阪神の上本。チーム最強バッターが2番に入るという理想的布陣で、毎年失速しがちな9月の阪神のイメージを払拭する活躍で、リーグ2位をキープ。クライマックスシリーズファーストステージの開催権を獲得しました。足を絡めた攻撃力も魅力で、盗塁の効果を示すwSBの値もリーグ1位。走力とRC27の値の高さが決め手となり、9月のMVPに選出です。

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パ・リーグ 山川穂高(西武)
OPS 1.077(1位)
打率 .309(6位)
本塁打 8(1位)
長打率 .679(1位)
出塁率 .398(3位)
RC27 7.14(1位)
wOBA 0.451(1位)
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山川が2ヶ月連続の選出となりました。これで8、9月の2ヶ月で17本塁打の量産。規定打席に達していないにもかかわらず21本塁打でリーグ12位にランクインしています。

チームでも4番を任されるようになり、森友哉とともにスタメンに名を連ねることで、西武攻撃陣により厚みが増しました。そうなると、メヒアが守るポジションは?DHは嫌だと言ってるようですし、、、去就が気になるところです。

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投手部門
セ・リーグ 菅野智之(巨人)
登板 5
4勝0敗
防御率0.47(1位)
QS率 100%
WHIP 0.71(1位)
FIP 1.99(1位)
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8月後半は怪我で離脱していた菅野ですが、9月に入り復帰すると5試合すべてQS を達成、しかも2試合完封という獅子奮迅の活躍を見せました。昨年はセイバーの指標で見れば今年と遜色ない成績を残しつつも打線の援護がなく9勝止まりという辛酸をなめましたが、今年は17勝と最多勝が確定。個人成績としては充実のシーズンを送れたのではないでしょうか。

翻ってチーム状況を見ますと、13連敗という悪夢もありながら、終盤はDeNA とクライマックスシリーズ進出を争うまでに至りました。それも菅野、田口、マイコラスを中心とした先発陣、カミネロ、マシソンを中心とした救援陣の活躍の賜物でしたが、9月に入りまた打撃陣が失速。チーム打率 .233、チームOPS 0.647と序盤の不調時に逆戻り。月間併殺打も28とことごとくチャンスを潰す攻撃にファンもやきもきしたことでしょう。

結局11年ぶりにBクラスとなり、初めてクライマックスシリーズに進出せずシーズンオフを迎えることになりました。

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パ・リーグ 菊池雄星(西武)
登板3
2勝0敗
防御率 0.00
QS率 100%
WHIP 0.74
FIP 1.18
被打率 .154
奪三振率 10.96
K/BB 5.60
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今シーズンは2段モーション騒動もありましたが、9月もしっかり成績を残しました。10月3日の楽天戦において8回3失点で16勝目をあげ、ソフトバンクの東浜巨と並びました。これで最多勝はほぼ手中にしたといえるでしょう。

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