2,000本安打のセイバーメトリクス/鳥越規央の野球視角

2017年9月22日更新

9月8日に阪神の鳥谷敬がNPB史上50人目となる2,000本安打を達成しました。鳥谷の2,000本安打到達時の通算成績は以下の通りです。



14シーズンでの2,000本到達はアレックス・ラミレスの13シーズンに次ぐ2位タイの記録で、他に14シーズンでの達成者は、長島茂雄、張本勲、榎本喜八というレジェンド級の打者が並んでいます。36歳2ヶ月での達成は13位タイの記録で川上哲治、前田智徳と同位、大卒選手としては長島茂雄の35歳3ヶ月についで2位であります。

シーズンベース、年齢ベースでみると早い部類の記録のように見えますが、ただ試合数ベースで記録を見てみると、1,976試合での達成は25位タイで、50人の平均試合数が1,966ですから、ほぼ平均並みの試合数です。また25位タイということは統計学でいう中央値にあたります。この観点からでは、平均的なペースでの達成とも言えるでしょう。さらに言えば、鳥谷は2004年9月9日から現在まで連続試合出場、さらには途中667試合連続フルイニング出場をしたこともあって、打席数はかなり稼いでいることになります。

ここで、2,000本到達にかかった試合数ランキングの、上位と下位のデータを見てみましょう。

試合数の少ない方のランキング

上位の3人は、2,000本安打到達時の通算打率が3割を超えています。特に川上の打率は張本、若松に次ぐ高記録です。川上とラミレスの打席数はほぼ同じですが、打数が300ほど違うのは、ラミレスは初球打ちが多く、四球が少ないことに起因します。

なお、若松と張本は7,000打席未満での2,000本安打到達となっています。

試合数が多い方のランキング

谷繁の25シーズン、9,693打席での到達は群を抜いて遅い達成記録となっています。打率2割4分3厘での達成も最低記録でしょう。8番打者での最多打席記録を持つ谷繁なので、本来なら上位打線を打つ打者に比べれば不利な状況ですが、中日において谷繁の存在を脅かす捕手の台頭がなかったが故の在籍年数の長さ、試合数の多さとなり、2,000本安打到達となったわけです。

田中幸雄は、現役ラストシーズンでの2,000本安打到達となったのですが、すべてのシーズンで打率3割を超えたことがありません。これは柴田勲(巨人)と同様の記録です。なお柴田は巨人での1番打者としての最多打席記録を持っており、それだけ打席に立てる機会が多かったが故に、3割を超えずとも安打数は重ねていくことができたのです。衣笠祥雄(広島)も2,000本安打到達時は3割超えのシーズンはありませんでしたが、翌年に自己最高となる打率3割2分9厘をマーク。この年、打点102で打点王、広島の優勝に貢献、MVPに輝きました。

・これから2,000本安打を目指す打者

現役選手で2,000本安打に近い選手は以下の通りです。

2017年9月11日現在

内川は、現役で最も2,000本安打に近い選手ですが、7月23日に剥離骨折のため登録を抹消。復帰は9月ごろとの報道もあるようですが、チームはパ・リーグ史上最速で優勝を確定させました。今シーズンの打率が2割9分8厘ですから30安打を打つためには、100打数が必要となります。仮に1試合4打数あるとしても、25試合必要となり、ソフトバンクの残り試合数を上回っています。今シーズンは無理をさせず、クライマックスシリーズ出場を目指すことになり、2,000本安打チャレンジは来季に持ち込むことになるでしょう。

来季も同じペースで安打を量産すると、ゴールデンウィークあたりの達成が見込まれます。

余談ですが、過去5月5日のこどもの日に2,000本安打を達成した選手が3人もいて、2,000本安打の特異日となっています。

(中村紀洋はNPBのみの記録)

福浦は残り41安打ですが、2016年は90打席20安打、2017年は136打席27安打とここ2年での年間ペースよりも多い残り安打数となっています。ファーストは井上晴哉や新外国人の起用が主になるでしょうから、来季も代打での起用が多くなることでしょう。年間100打数としても代打成功率4割という、神様的な活躍でもしない限り来季での達成は困難だと予想します。

坂本は29歳になる今シーズンまでで1,544安打を放っており、これは3,000本安打の張本勲の1,546安打に次ぐペースで、今季終了までにはこれを超えるでしょう。

ちなみに29歳になるシーズンまでで1,500安打以上を記録した選手は

 榎本喜八 1,635安打

 小玉明利 1,556安打

 張本勲  1,546安打

 豊田泰光 1,526安打

の4名です。

このうち2,000本安打を達成したのは、榎本と張本。

小玉は31歳にして近鉄の選手兼任監督を務めることになったため、自身の出場機会が減り、さらには成績不振で1年で解任、そのまま阪神にトレード。結局1,963安打を残し、34歳で現役を引退します。

豊田は西鉄ライオンズから国鉄スワローズに移籍した後の1963年に29歳で1,500安打を達成しますが、2年後肘の故障が悪化し出場機会が激減。1969年、34歳のシーズンで引退します。通算安打は1,699本でした。

榎本喜八は31歳7ヶ月で2,000本安打という最年少記録を持っていますが、坂本が31歳7ヶ月になるのは2020年7月。それまでに坂本がフル出場すると仮定すると約350試合の出場が見込まれます。のちに紹介しますが、3番打者は年間平均635打席、556打数が見込まれます。ということは、2020年7月までだと

556×(350÷143)=1,361

の打数となります。そこで残り456安打を達成するには、

456÷1,361= .335

つまり3割3分5厘のハイアベレージで打ち続ける必要があります。

2016年に坂本は3割4分4厘で首位打者に輝いているので、全く可能性がないわけではありませんが、今月に入ってからの坂本は打率1割1分6厘と低迷。10年間巨人のショートとしてほぼフル出場を果たしてきた勤続疲労が出てきている可能性があります。人気球団に所属するためオフシーズンも多忙が続くでしょうが、オフはしっかりオーバーホールして、最年少での2,000本安打達成を期待します。

・打順別期待打席数と打率について

2014年から2016年のNPBのデータより、打順別の打席数の期待値は以下のようになります。



1、2番打者は3、4番に比べて年間30打席ほど多く回ってくることがわかります。それだけ安打製造のチャンスも増えるということになります。

では、ここに打順別の平均打率を乗じてみましょう。



安打数はやはり1番打者が多く稼げるということがわかります。また3、4、5番のいわゆるクリーンナップはどの打順でも平均150安打が見込まれることもわかります。

そこで、打順と打率から見込まれる安打数のクロス集計を作成してみると以下のようになります。





オレンジがこのペースを10年続ければ2,000本安打に達するゾーンで、以下

黄色:11年

緑:12年

青:13年

グレー:14年

白:15年以上

を示しています。

昨今、1、2番にチームの主力打者を置く打線の組み方が浸透してきていますが、首位打者を狙えるような打者を1、2番に据えることで、チーム得点力も上がりますし、2,000本安打達成の可能性も広がることになるでしょう。

チーム事情もあるでしょうが、坂本の最年少2,000本安打、そしてNPBでの3,000本安打を狙うのであれば、1、2番での起用をお勧めします。

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