得失点のセイバーメトリクス 〜今年は接戦が多いのか?〜/鳥越規央の野球視角

2017年8月24日更新

先日、このようなご質問をいただきました。
「今年のプロ野球は、3点差以内の接戦が多くないですか?」

これをデータで検証してみましょう。

昨年と今年で、3点差以内のゲームの割合を比較してみますと、

2016年  31.2%

2017年  30.3% (8月13日現在)

というように、昨年とほぼ同等の割合であることがわかりました。しかし、ご質問いただいた方は、何かある根拠があって感じたことでしょうから、その要因について調べてみました。

まずは、各チームの得点差分布を見てみましょう。

セ・リーグ





上位と下位で3点差勝ちの割合に大きな差が出るかと思いきや、中日の3点差勝ちの割合がリーグ2位の高さとなっています。その要因の一つは、救援防御率が3.53でリーグ3位と接戦をものにできる力を持つ救援陣が備わっていることにあります。ただ今年の中日は、勝ったときの最大点差が7でリーグ最低。大量失点による敗北がかなり目立ちます(ちなみに2けた得点は1試合しかなく、しかもその試合は10-11で負けています)。

パ・リーグ





ソフトバンクと楽天の3点差以内勝率が突出しています。12球団平均が30.3%ですので、かなりの割合で3点差ゲームをものにしていると言えるでしょう。

ここで、各チームの3点差以内勝率を昨年と比較してみましょう。





今年、3点差以内勝利の割合を増やしているのは5球団。その中でも楽天の割合の増加が顕著に大きくなっています。そういった一つの事例があるから「今年の3点差以内の接戦が増えた」という印象を与えるのではないでしょうか。

ちなみにご質問をされた方のご贔屓球団はヤクルト。ヤクルトの3点差以内負けの割合が37.7%でリーグトップ。つまり3点差以内でやられている印象の大きさというのもそう思う原因の一つなのではないでしょうか。

・ピタゴリアン期待値による勝率推定

セイバーメトリクスでは、チームの得点と失点から勝率を推定するピタゴリアン期待値というものが提案されています。



Nはスポーツの種類によって、適切な値が推定されており、NPBではN=1.64とすることで期待勝率が求められるとされています。

では、2017年シーズンここまでの得失点から、期待勝率を推定してみましょう。

セ・リーグ

(8月15日現在)

上位の実際の勝率と期待値勝率の値は似通っていることがわかります。

僅差での勝ちが比較的多く、大量失点による敗北が目立つ中日は、ピタゴリアン期待値よりも実際の勝率の方が良くなっています。逆に僅差での敗北の割合の大きい巨人、ヤクルトの場合は、ピタゴリアン期待値による勝率よりも実際の勝率が悪くなっているのです。

パ・リーグ



ソフトバンク、楽天の実際の勝率がピタゴリアン期待値よりも大きく上回っているのは、僅差での勝利の割合が大きいことに由来します。逆に西武の実際の勝率が、ピタゴリアン期待値を下回っているのは、点差を開いての勝利の割合の多さによるものです。パ・リーグでは、3点差以内勝利よりも4点差以上勝利の割合が大きいのは西武のみです。

1点差でも10点差でも相手の得点よりも上回る得点をあげれば勝利するのが野球。しかもサッカーのように得失点による順位づけはないわけで、今後いかに、投打の噛み合わせをよくするようなローテーションや打順の組み方ができるかによって、勝ちを効率良くもぎ取ることがより高い順位への攻略となることでしょう。

セイバーメトリクス的7月の月間MVP

---------------------
打者部門
セ・リーグ  桑原将志(DeNA)
OPS 1.117(2位)
本塁打6(3位)
打率 .389(1位)
長打率 .678(3位)
出塁率 .439(1位)
RC27 9.11(1位)
---------------------

今月のセ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。



7月12勝8敗とDeNA躍進の原動力となった1番打者桑原将志。筒香嘉智、宮ア敏郎とともに得点源の中核を担っています。得点圏打率5割ということで、下位打線で作ったチャンスをものにするというデータも残っています。好調の両外国人打者を抑えての選出です。

---------------------
パ・リーグ 柳田悠岐(ソフトバンク)
OPS 1.212(1位)
打率 .393(4位)
本塁打4(6位)
長打率 .705(1位)
出塁率 .507(1位)
RC27 10.52 (1位)
---------------------

2ヶ月連続の文句無しの選出となりました。柳田の昨年との違いはフライボールの率の上昇にあります。昨年はフライ率36.6%のゴロバッターでしたが、今年は50.5%と急上昇。MLBで話題のフライボールレボリューションを練習に取り入れることにより、飛躍的に成績が向上しました。これは川ア宗則の進言によるものとの報道もあります。トリプルスリーだけでなく三冠王の可能性も見えてきました。

データ引用URL : https://baseballgate.jp/p/98161/

---------------------
投手部門
セ・リーグ 菅野智之(巨人)
登板4
4勝0敗
防御率0.31(1位)
QS率100%
WHIP 0.72(1位)
FIP 1.20(2位)
奪三振率9.31(3位)
K/BB 10 (1位)
---------------------

もともと、菅野をはじめ、マイコラス、田口麗斗と安定した先発投手陣を擁する巨人。7月は13勝8敗と調子も上向きました。その中でも、飛び抜けた活躍を見せたのが菅野でした。菅野の球速は月を追うごとに上昇しているというデータもあります。握力改善のトレーニングが功を奏しているようです。

---------------------
パ・リーグ 岸孝之(楽天)
登板4
2勝0敗
防御率 2.57(6位)
QS率50%
WHIP 0.82(1位)
FIP 1.71(1位)
奪三振率 11.57(1位)
K/BB 4.50 (4位)
---------------------

月間最多の28イニングを投げ、被打率 .152、奪三振36と獅子奮迅の活躍をしました。ただ援護率 2.79と楽天打線が湿りがちで勝ちにはつながっていません。楽天が優勝戦線に残るには、投打の噛み合わせを改善しなければなりません。

なお、次点として上沢直之(日本ハム)を挙げておきます。月間チームQS率18.2%と大低迷する先発投手陣の中で一人だけ100%のQS率を達成。というか、7月のQS達成は上沢だけ。まさに孤軍奮闘という活躍でした。

今日の試合速報

関連記事