2017年ペナントレース前半戦の波をセイバーメトリクスで解析(セ・リーグ編)/鳥越規央の野球視角

2017年8月4日更新

今回は前回に引き続き、統計学で用いられる「移動平均」で2017年のペナントレース前半戦におけるセ・リーグの各チームの「調子の波」を紹介します。

以下のグラフでは、チーム得点と失点の5試合移動平均を折れ線で表し、

得点>失点の期間はレッドゾーン、

失点>得点の期間はブルーゾーン

として表しています。

広島東洋カープ



今季も首位を独走中の絶好調の広島。4月の後半から5月の前半にかけて、得点と失点にほとんど差がない綱渡り状態があったものの、それ以外では安定して得点が失点を大きく上回る安泰の状態です。

チームOPS 0.784はダントツの1位と言う攻撃力もさることながら、チーム防御率 3.30で2位、チームQS率62.8%、救援防御率 2.84 はリーグ1位と、先発、救援ともにリーグ最強という盤石の戦力を誇っています。

そして何よりもこの戦力がほとんど怪我で抜けていないというのも、首位独走の大きな要因です。昨年先発投手陣の中心として活躍したジョンソン、ルーキーながら前半ローテーションに入り1勝を挙げた床田寛樹が怪我で登録抹消されているのが目立つくらいで、野手は主力がほぼフル出場の状況。そこにOPS 0.730の安部友裕、ローテーションを担う岡田明丈、九里亜蓮、薮田和樹といった若手の成長も相まって、チームに好循環が生まれています。

阪神タイガース



5月、そして交流戦で、得点が失点を上回る時期が見られます。この時期に得た貯金でリーグ前半は上位に座っていました。しかし交流戦終盤からリーグ戦再開の時期にかけて8連敗を喫し、そこから得点と失点が均衡する状態が続いています。

チーム防御率は3.25と今年も投手陣の成績は良いようですが、先発投手陣のコマ不足に悩んでいる様子です。そんな中、メッセンジャーと秋山拓巳が高QS率で阪神先発投手陣の核を担いました。なおメッセンジャーは7月に入り中5日のローテーションとなりましたが、5試合で4回のQSと安定感はそのままキープの状況です。

後半戦は7月のOPSが 0.798の大山悠輔、1.052のロジャース、0.857の中谷将大といった新クリーンナップの攻撃力でどこまで反攻できるかに注目です。

横浜DeNAベイスターズ



交流戦後、16勝9敗と調子の上がってきたDeNA。阪神との2位争いが熾烈です。交流戦後、OPS 0.727と打撃の好調もさることながら、QS率73.1%と先発投手陣に安定感が備わってきました。特にオールスター後は9戦連続でQSを達成しています。

新人ながらローテーションの一角を担っていた濱口遥大の肩の怪我による戦線離脱は大きいですが、シーズン序盤に活躍していたウィーランドがその穴を埋めるようにローテーションを回しています。

3番筒香嘉智、6番戸柱恭孝、7番梶谷隆幸、8番投手、9番倉本寿彦という、一見奇をてらったような打線も徐々に結果を残してきています。でもそれは1番桑原将志(OPS 0.827)、5番宮ア敏郎(OPS 0.882)の急成長があっての賜物でしょう。

またDeNAも主力の怪我人がほとんど出ておらず、現有戦力をフルに活用できているが上での上位進出でしょう。

読売ジャイアンツ



球団ワーストの13連敗を喫した巨人。その時期は先発投手陣がQSを達成できず、打撃陣も大きく沈んでいたまさに暗黒の状況でした。しかしその時期を除けば、先発投手は田口麗斗、菅野智之、マイコラスを中心に安定してきており、7月はやっと月間勝ち越しとなりました。オールスターあたりから、1番長野久義、2番マギー、3番坂本勇人という上位打線に組み替えるなど攻撃戦略に工夫も見せてきました。ただ先発投手は3人以外が深い谷間となっており、攻撃陣に若手の顔が見えてきません。しかも今シーズンの打撃陣は8月1日のヤクルト戦で10-3となるまでは、2桁得点を記録していませんでした。反攻するには現有勢力の調子が上がること、そして投打の噛み合わせが必要となってくるでしょう。

中日ドラゴンズ



前半戦は、いろんな意味で「安定して弱い状態」が続いていました。昨年から言えることなのですが、得点と失点の差がそれほど大きくなく、いわゆる紙一重の状況だったのです。大きな連勝もなければ、大きな連敗もなかったドラゴンズでしたが、オールスター明け、投手陣に異変が生じます。防御率が6.24と一気に低下してしまいます。QSも7月8日からの16試合でたったの3回。顕著だったのが、7月25日からのヤクルト3連戦。3戦合計で31失点。さらには26日の試合では10-0と7回表まで10点リードの状況から、10-11とサヨナラ負けを喫してしまいます。その投壊状態が最近のグラフの青さに反映されています。

打線も6月に平田良介が怪我で離脱、代わりに上がってきた森野将彦も7月2日に怪我で登録抹消と主軸の怪我に泣かされています。さらにはリーグトップの27本塁打を放っているゲレーロも12死球と死球禍に悩まされ、スタメンを外れることも。

明るい材料は、1番でスタメンを任されている京田陽太の新人王レース独走といったところでしょうか。

東京ヤクルトスワローズ



巨人の13連敗の陰に隠れての10連敗とか、7月の14連敗(どちらも1分を挟む)と大型連敗をしてしまう今年のヤクルト。とにかく「ヤ戦病棟」と揶揄される始末の怪我人の多さです。シーズン当初から川端慎吾、畠山和洋が2軍スタート。シーズン途中で雄平、大引啓次が離脱。長年ヤクルトの救援陣を支えてきた秋吉亮も6月に肉離れで登録抹消されてしまいました。この惨状は、健康を売りとするヤクルト本社の株主総会でも議題に挙がったとか。

2年連続トリプルスリーの山田哲人は四球数、本塁打は多いものの、打率が2割3分に到達しない状況。バレンティン一人頼みの打線となっては得点力向上も期待できません。そんな矢先、オールスター明けは2けた近い得点で投手陣をカバーする試合も目立ってきました。8月に入ってもこの打撃が続けば反攻もあるのでしょうが、いかんせん打線は水もの。移籍の選手の活躍も目立ちますが、若手の台頭が目立たないようでは、次シーズン以降の立て直しも厳しいことでしょう。

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