2017年ペナントレース前半戦の波をセイバーメトリクスで解析(パ・リーグ編)/鳥越規央の野球視角

2017年7月21日更新

今回は統計学で用いられる「移動平均」で2017年のペナントレース前半戦におけるパ・リーグの各チームの「調子の波」をご覧いただきましょう。

移動平均とは大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るために算出する統計指標です。株価の大まかな変動を捉え、売買のタイミングを計る際によく使用されます。





この移動平均を使って、ペナントレースで各チームがどこで波に乗れたかを計ってみましょう。以下のグラフでは、チーム得点と失点の5試合移動平均を折れ線で表し、

得点>失点の期間はレッドゾーン、

失点>得点の期間はブルーゾーン

として表しています。

東北楽天ゴールデンイーグルス



今季の楽天は、1番茂木英五郎、2番ペゲーロに象徴されるように上位打線が好調で、昨年の得点力不足を見事に解消しています。下位打線も出塁率が高いため、下位打線で作ったチャンスを上位でものにしている様子もうかがえます。

しかし、首位をキープしている原動力は打線だけではありません。美馬学、岸孝之、則本昂大の先発3本柱がしっかりとその役目を果たしています。特に美馬が80%、岸が92.3%という高いQS率となっています。

得失点の波を見ると、最近では得点と失点の差が小さく、細めのグラフとなっています。得点力が下がってもそれを投手陣がしっかりと補い、勝利を得ていることがわかります。とても今季は投打の噛み合わせの良い状態となっています。

1番打者として活躍していた茂木の離脱の影響は大きく、得点力に陰りが見え始めています。まだ復帰のめどが立っていないとの情報もありました。しかしこの噛み合わせのよさと投手陣の安定が続けば、チームとしてそれほど大きな崩れはないものと思われます。

福岡ソフトバンクホークス



昨年、一昨年と同様、盤石の戦いぶりを見せています。また投打の噛み合わせも良い状況が伺えます。特に5月はチーム防御率 3.78と崩れたものの、チーム打率 .301、チームOPS 0.877というとんでもない攻撃力でカバーし、首位争いをしています。

昨年四球禍で苦しんだ柳田悠岐ですが、今季は打率 .327、本塁打 23とリーグ上位に位置し、OPS 1.083はパ・リーグダントツの1位。一昨年トリプルスリーを獲った勢いを取り戻しています。得点圏打率も .402と勝負強さを発揮しています。また内川聖一、デスパイネと続く4、5番も強力ですし、一時はOPSが0.9超えを記録した上林誠知が下位打線に座っていて、得点力の底上げも期待できます。これで1、2番の出塁率が向上すれば、鬼に金棒状態でしょう。

埼玉西武ライオンズ



半月ごとに好不調の波が入れ替わっているという不思議な状態が続いてます。これだけ投打のバイオリズムの周期がずれるというのも珍しい気がします。これを噛み合わせの良い状態と言って良いのやら。

投手陣は、QS率リーグ1位、93.3%の菊池雄星をはじめ、ウルフ、野上亮磨も高QS率でローテーションを守ってきました。また打線では、1番秋山翔吾、2番源田壮亮、3番浅村栄斗、4番中村剛也の上位打線が機能し、メヒアが下位でホームランを量産するという、効果的な打線が組めています。さらには昨年大きな課題だった内野守備が、源田壮亮の加入により大きく改善しました。

後半戦、このバイオリズムがうまくかみ合い、どちらかが不調でも勝ち星が拾えるようになれば、優勝争いも可能でしょう。

オリックスバファローズ



こちらは4月と5月で

4月  OPS 0.746 防御率 2.90

5月  OPS 0.622 防御率 4.28

と、全く違う様相を呈しています。打線下降の原因の一つが4番ロメロの離脱。6月に復帰するとチームOPSが0.738に復活。ロメロ頼みの打線と言えるでしょう。7月に入り、吉田正尚も復帰し、3番吉田、4番ロメロの中軸が固まりました。ただ2番にOPSが極端に低い打者を置くトラディショナルな打線の組み方をしているので、上位打線のつながりが構築されていません。それを改善すればさらなる得点力アップが期待できるでしょう。なので、OPS 0.9を超えるT-岡田やマレーロを上位に据えるというのも一計です

先発は西勇輝、金子千尋、ディクソン、松葉貴大に加え、チーム1位のQS率 75%を誇るルーキーの山岡泰輔がローテーションを守っています。なおチームQS率 56.3%はリーグ1位の安定感です。

このように投打の役者は揃っているのに、6月以降はそれがかみ合っていない状態が続いています。後半戦はその改善を期待しましょう。

北海道日本ハムファイターズ



昨年、投打に活躍した大谷翔平が存在しないことでチームがこれだけ崩れるのかということを示した前半戦でした。5月まで打率4割をキープしていた近藤健介も腰のヘルニアで戦線離脱。よって6月以降、得点力が低迷し投手陣にかなりの負担をかけています。去年まではレアードを7番に置く余裕もあったのですが、台所事情により4番を任されている状況です。主力がけがで抜けても若手が補うというスタイルでここまでチーム作りをしてきた日本ハムですが、大谷翔平、近藤健介の穴は相当大きいようで、なかなか調子が上がってきていません。

また先発投手陣もチームQS率が31.7%とリーグワースト。そのため救援投手陣にかなり負担がかかっているようで、7月7日のソフトバンク戦では先発の有原航平が、9回127球、無四球完投で敗戦投手ということも。

昨年はこの辺りから15連勝とギアチェンジして優勝までこぎつけましたが、今年はそのポテンシャルが残っているのでしょうか。

千葉ロッテマリーンズ



もう、今年に関しては何をか言わんやです。赤い部分が交流戦の中ほどで見える程度。あとはファンの心理を映し出すかのような真っ青だらけです。伊藤監督の責任問題が取りざたされていますが、これはフロントの編成に問題ありと言わざるを得ないでしょう。

デスパイネが抜けて、明らかに長距離砲不足だった打線。西野勇士が先発に回ったことによる救援陣の再構築。それらの補強が不完全のままシーズンに入れば、自ずと結果はこうなります。

とにかく全ての指標がリーグワーストで、良い点を見つけることが困難なチーム状況ですが、ようやくパラデスの打撃が上向きになり、途中加入のサントスも打率3割で好調を維持。よほどペーニャの加入が刺激になったのでしょうか。チーム再構築に向けて、しっかりと戦力分析をし、効果的な補強に勤めていただきたいと願うばかりです。

次回はセ・リーグ編をお届けします。

セイバーメトリクス的6月の月間 MVP

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打者部門
セ・リーグ 丸佳浩(広島)
OPS 1.224(1位)
本塁打 6(3位)
打率 .402(1位)
長打率 .756(1位)
出塁率 .468(1位)
RC27 10.41(1位)
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7月6日に通算100号本塁打を達成した丸。チーム内でもOPSはトップ。赤ヘル不動の3番打者としてチームに貢献しています。もちろんオールスターにも選出されています。

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パ・リーグ 柳田悠岐(ソフトバンク)
OPS 1.380(1位)
打率 .363(4位)
本塁打 12(1位)
長打率 900(1位)
出塁率 .480(1位)
RC27 10.96(1位)
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こちらも6月23日に通算100号本塁打を達成しました。しかもその日は2本塁打。6月に行われた交流戦ではMVPも獲得。2年前にトリプルスリーを獲得した良い状態を取り戻しています。

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投手部門
セ・リーグ マイコラス(巨人)
登板 4
2勝1敗
防御率 2.20(2位)
QS率 100%
WHIP 0.98(4位)
FIP 0.90 (1位)
奪三振率 10.70(1位)
K/BB 11.33 (1位)
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6月のマイコラスはとにかくコントロールが素晴らしく、112人と対戦して四球はわずかに3(ただ死球も3ですが)。奪三振率もトップでFIPが驚異の0点台。打線事情はいまだ苦しい巨人ですが、投手陣は菅野智之、田口麗人とともに牙城を守っています。

それから次点として、本家の方でMVPとなりました中日の岩瀬仁紀を挙げておきます。14試合に登板しWHIP 0.51、奪三振率 8.49、被打率 0.108、FIP 1.59の活躍で中日救援陣の中心として活躍いたしました。

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パ・リーグ 美馬学(楽天)
登板4
2勝0敗
防御率 1.24(2位)
QS率 100%(1位)
WHIP 1.03(6位)
FIP 1.72 (1位)
奪三振率8.38(7位)
K/BB 4.50 (3位)
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今月のパ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。



先月も候補として挙がり、今月もQS率100%で楽天ローテーションの一角をしっかり担う美馬学をMVPとして推挙いたします。

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