連敗のセイバーメトリクス/鳥越規央の野球視角

2017年6月15日更新

今シーズン、巨人が球団ワースト記録となる13連敗を喫してしまいました。

それ以前は1975年の11連敗(9月4日〜17日、9月6日の引分をはさむ)が最長でした。なお1975年といえば、長嶋茂雄監督就任1年目で、打線の主力が30代のV9戦士という状況、チーム打率はリーグ最下位の .236でした。これは現在の巨人にも相通じるものがあります。なお当時の4番、王貞治の打率は .285と3割に到達していませんが、OPSは1.029。四球123(敬遠27を含む)で出塁率 .456、ホームラン33本で長打率 .573と孤軍奮闘のシーズンでした。また引退した長嶋の穴を埋めるべく補強したジョンソンが打率 .197、OPS 0.634 と期待はずれ。チームは球団創立以来初の最下位となり、世代交代を余儀なく迫られたシーズンとなりました。

ちなみに、巨人の影に隠れる形でヤクルトも10連敗(1分はさむ)、その前にも 5連敗しているので、5月21日から6月13日までの19戦で2勝16敗1分と泥沼にはまっていました。

プロ野球各球団の連敗最長記録は以下の通りです。



日本記録は1998年、ロッテの18連敗です。この年のロッテは小宮山悟、黒木知宏の両エースの活躍で4月は11勝5敗と大きく勝ち越し、スタートダッシュに成功しています。しかし5月に入ると、中継ぎ投手陣の層の薄さが災いし、歯車の噛み合わせが狂い出します。5月は9勝16敗と貯金を使い果たし、そして6月、伝説の18連敗につながるわけですが、18連敗中でもクオリティースタートは7回達成されています。ただ、救援陣の手薄さは改善されず、先発要員の黒木が救援で登板するなどのスクランブル体制を取らざるをえない状況に陥ります。

7月5日ついにパ・リーグ記録更新となる16連敗に到達。迎えた7月7日のオリックス戦、黒木が先発し、8回終えて3-1と2点リード。本来なら9回はクローザーで押さえるべきところでしょうが、投手の台所事情よりそのまま黒木が9回のマウンドに。連敗阻止という重責を担って、高温多湿のマウンドで脱水症状になりながら投げ続け、ランナー一人出しながらも2アウトまでこじつけます。迎えるバッターはプリアム。1ボール2ストライクからの5球目、146km/hのストレートはレフトスタンドポール際に運ばれ、3-3の同点。ここで黒木は降板、藤田宗一がなんとか切り抜け延長戦に持ち込みますが、12回裏、広長益博にサヨナラ満塁ホームランを打たれ17連敗。翌日も4-6で敗北し18連敗。翌9日、小宮山が9回5失点ながら完投で勝利、ようやくそのトンネルを抜けることができました。

なお、この連敗の後、救援投手陣の建て直しもあり、10の貯金を作り、最終的には借金10でシーズンを終えています。またチーム打率は .271でリーグ1位、チーム防御率 3.70はリーグ2位と、戦力が劣っていたわけではありませんでした。けが人や不調がたまたま重なる時期であり、投打の噛み合わせの悪さがその結果に現れたものだと考えます。

さて、今季の巨人ですが、

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チーム打撃成績
打率 .237 (リーグ6位) 
OPS 0.632 (6位) 
本塁打 32(5位)
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チーム投手成績
防御率 3.70(リーグ4位) 
WHIP 1.30(1位) 
FIP 3.76(6位)
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と投打ともに成績が振るいません。これは1975年当時に匹敵するものです。

連敗に突入するまでは、先発投手陣のQS率が62.8%と高い水準だったのですが、連敗中のQS は13試合中3回。10試合で先制点を奪われています。攻撃陣で特に気になったのが、連敗中、初回に得点が入ったのが6月4日の1回だけです。なお、連敗以前の5月17日から6月3日まで16戦連続で初回に得点が入っていません。それもそのはず、今季の巨人のスタメン1番、2番の打撃成績が

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1番  
打率 .209
出塁率 .286  
OPS 0.555
盗塁成功率 66.7%
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2番  
打率 .227
出塁率 .249  
OPS 0.535 
盗塁成功率 54.5%
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となっており、打席が多く回ってくる打順に入る打者がほとんど出塁できず、さらにはこの貴重な出塁機会を盗塁失敗で潰すという、この体たらくでは、先制点が期待できず、得点力も上がらないのは当然です。

また打線の組み方についても、チームで調子の良かった坂本勇人やマギーを離して配置し、間に出塁率の低い選手で打線を分断することが散見されました。最近、ようやく2番坂本、3番マギーという配置にしてますが、最近の2人の調子を見ると遅きに失している感は否めません。

巨人は伝統的に一度組んだ打順をコロコロ変えることはしないチームなのですが、今は予告先発が導入されているわけですから、相手投手との相性や調子を鑑みて、フレキシブルなオーダーを組むことでこの状況を打開するしかないと思います。

なおヤクルトに関しても、

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先発2番  
打率 .217
出塁率 .301  
OPS 0.582
盗塁成功率 25.0%
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先発4番 
打率 .264
出塁率 .318  
OPS 0.679
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と打線の分断が見受けられます。先発投手の好投も援護のなさに報われない日々が続いています。両チームとも、データを活用した選手運用でこの局面の打開を図ってほしいものです。

セイバーメトリクス的5月の月間MVP

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打者部門 
セ・リーグ ビシエド(中日)     
OPS 1.103(1位)
本塁打 8(3位) 
打率 .341(4位)
長打率 .693(1位)
出塁率 .410(7位) 
RC27 8.15(1位)
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今回はOPS、RC27などの指標で1位もさることながら、6試合連続本塁打という、王貞治、バースの持つ日本記録7試合連続まであと1試合というところまできたインパクト面も加味して、ビシエドを選出いたしました。

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パ・リーグ 近藤健介(日本ハム)  
打率 .397(1位) 
OPS 1.111(3位)
出塁率 .571(1位)
長打率 .540(9位)
RC27 12.22(1位)
wOBA .485(1位)
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今月のパ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。



5月14勝9敗と持ち直した日本ハム、月間チームOPSも .797まで回復しました。その原動力となったのがこの2人です。今回も、出塁率が5割超で55試合目まで打率4割以上をキープしている近藤を引き続き推挙いたします。

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投手部門
セ・リーグ 能見篤史(阪神)
先発登板 4
2勝0敗
防御率 .034(1位) 
QS率 75%
WHIP 0.90(1位) 
被打率 .178(1位)
FIP 1.91(1位)
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今月のセ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。



本家では、5月に達成された3試合連続完封勝利を讃える意味もあったのではないかということで、菅野智之が選出されていますが、セイバーメトリクス的評価で5月のデータを検証すると、能見の指標がずば抜けて優れていることがわかります。また地味ではありますが、DeNAのウィーランドはK/BBが優れており、安定感抜群でDeNAローテーションの一角をきっちり担っています。

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パ・リーグ 菊池雄星(西武)
登板 4 
3勝1敗
防御率 1.24(1位) 
QS率 100%
WHIP 0.76(2位)
FIP 1.89(1位)
奪三振率 9.62(2位) 
K/BB 5.17(2位)
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今月のパ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。



本家では、8試合連続2桁奪三振の日本記録を樹立した則本昂大が受賞しています。それだけインパクトのある業績だということは疑いのないことでしょう。ただ、則本の月間奪三振46、奪三振率12.94が他を抜きん出ていることは確かなのですが、四球が10、被本塁打3とマイナスの側面も見受けられます(もちろんそんなに大きい数値ではないのですが、他と比べてという意味でです)。セイバーメトリクスで評価すると、美馬や岸といった先発投手陣がMVP候補に上がるなど、楽天の先発投手陣の優秀さが光ります。

そんな中、今回も先月に引き続き、各指標で安定した成績を収め、西武好調の要因を築いている菊池雄星を引き続き選出いたします。

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