「2番最強打者説」の有効性とは ―打順別打撃成績―/鳥越規央の野球視角

2017年5月17日更新

5月2日付日本経済新聞「スポーツ探Q」にて「ペゲーロ・梶谷…2番主砲説に脚光」という記事が紹介されました。 MLBでも普及し始めているこの説ですが、データでどこまで浸透しているのか、さらにはこの説がどこまで有効なのかを検証してみましょう。 まずは今シーズンにおけるNPBの先発打順別打撃成績を紹介します。

まずはDH制のあるパ・リーグから。


(本塁打、盗塁、犠打は1チームあたりの数値に変換)

パ・リーグでは 5番のOPSが最も高くなっていますが、これはオリックスの5番打者を務めたT-岡田や小谷野栄一、ロッテで孤軍奮闘している鈴木大地などが好調だったこともさることながら、6球団の5番打者がここまで押し並べて好調だったようで、それは分散の小ささに現れています。

次にDH制のないセ・リーグです。

セ・リーグでは3番のOPSが最も高くなっています。 巨人の坂本勇人、阪神の糸井嘉男、広島の丸佳浩など好調な打者が配置されています。 最近、DeNAが8番に投手を、ショートの倉本寿彦を9番に配置する打線を組んでいます。 4月14日に打撃に定評のあるウィーランドを8番にしたのが最初で、翌日からはまた9番投手でしたが、5月4日にまた8番ウィーランドにして以来、8番投手、9番倉本が定着。 ラミレス監督によると「(9番倉本には)リードオフマン的に1番につなぐ役割をしてほしい」とのこと。 これはMLBで昨年71年ぶりにシカゴ・カブスをワールドシリーズ優勝に導いた名将ジョー・マドンが採用している打線の組み方です。 将来有望な若手野手を8番でなく、9番に起用することで敬遠を防ぎ、経験値を積ませることが可能となります。 また9番から1、2番へつなぐという意味もこめられているそうです。 では現在のチームごとの先発打順別OPSを見てみましょう。


(5月10日時点)


(5月10日時点)

日経の記事の通り、2番のOPSが最も大きいのはDeNAと楽天です。 ただ楽天の場合、2番以降、3、4番の成績が他チームと比べてもかなり凹んでいます。4月の楽天の得点力向上の要因は、2番だけでなく、1番の茂木栄一郎の好調ぶりも影響していますし、何よりも7、8、9の下位打線の出塁率が4割近くありました。 下位打線で作ったチャンスを1、2番でものにするというパターンがはまり、開幕スタートダッシュに成功したのです。

DeNAは2番梶谷がチーム最高OPSとなっています。チームOPSでは巨人よりも小さいのですが、得点は巨人よりも多く入っています。明らかに1、2番のOPSに差があることが見受けられます。

もちろん、ただ単純に最強打者を2番に置くだけでチームの得点力が向上するわけではありません。 その前後を打つ打者とのつながりがあってこそ得点を生み出す原動力となるわけです。 ですのでロペス、筒香の復調次第ではさらなる得点力の改善がなされるのです。またDeNAの9番のOPSが他チームより大きいのは先述の9番倉本の影響です。このOPSがもっと上昇すれば、下位打線でチャンスを構築し、上位で返す好循環が生まれることでしょう。

阪神は3番の糸井がチーム最高OPSですが、その前後を打つ2番上本博紀、4番福留孝介も好調でした。 特に2番上本の働きぶりは顕著で、1番が出塁したら、犠打でなく強攻策でチャンスを広げ、3、4につなげる役割を果たすことができていました。

上位のチームと下位のチームの差異を見てみると、打撃好調な選手がシーケンスとなって連なっていることがわかります。 巨人は坂本、マギーと好調な選手はいるのですが、それが連なっていないことがわかります。 特に6番に不調の長野が配置されることによって打線が分断されている様子が伺えます。

セイバーメトリクスでは

・出塁率の高い選手は離さず、つなげて配置する

ことで得点期待値が上がるということが研究によって明らかになっています。 ただ単純に2番に最強打者を置くだけでなく、好調な打者を固めて配置することが重要なのです。 そのためには、予告される先発投手との相性や、現在の選手のコンディションを把握し、効果的な打線を組めるかが鍵となるのです。

セイバーメトリクス的3月、4月の月間MVP

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打者部門
セ・リーグ エルドレッド(広島)
OPS 0.974(1位)
本塁打 4(4位)
打率 .324(4位)
長打率 .541(1位)
出塁率 .433(2位)
RC27 7.49(1位)
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今シーズン、セ・リーグに移籍したばかりにもかかわらず、出塁率 .435、得点圏打率 .476(ともに1位)、OPS 0.924、RC27 6.87(ともに2位)と健闘し、阪神の快進撃に貢献した糸井嘉男(阪神)も最有力候補でした。今回はOPS、RC27などの指標で1位となったエルドレッドを選出しました。

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パ・リーグ 近藤健介(日本ハム)
打率 .416(1位)
OPS 1.142(2位)
出塁率 .558(1位)
長打率 .584(3位)
RC27 12.55(1位)
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今月のパ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。

今月のパ・リーグはOPS1越えが3人でした。楽天は「2番ペゲーロ」に注目が行きがちですが、1番に茂木がいたからこそ「最強の1、2番コンボ」が形成され、下位打線で作ったチャンスを得点に結びつけることができたのです。 今回は、出塁率が5割超、つまり打席に入れば凡退してベンチに帰るよりも塁に出る率が多いという無敵モードに入っていた近藤健介を推挙します。 四球も26と柳田悠岐(27個)についで2位となっています。

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投手部門
セ・リーグ 又吉克樹(中日)
先発登板 3
救援登板 3
2勝0敗
防御率 .88(1位)
QS率 100%
WHIP 0.78(1位)
被打率 .190(3位)
FIP 2.89
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今月のセ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。

8年目のシーズンで覚醒し、阪神のローテションの一角を担えるようになった秋山も最有力候補ではありました。 今回は開幕当初は救援でしたが、急な先発への配置転換にもかかわらず、QS率100%を達成し、台所事情の厳しい中日ローテションに光明を与えたという意味も込めて又吉を選出しました。

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パ・リーグ 菊池雄星(西武)
登板 5
2勝1敗
防御率 1.22(1位)
QS率 100%
WHIP 0.84(1位)
FIP 3.09(3位)
奪三振率 9.24(3位)
K/BB 3.2(5位)
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今月のパ・リーグ月間MVP候補は以下の選手でした。

この3投手、甲乙つけがたい成績でしたが、金子の四球の多さ、ウルフの三振の少なさを考慮した結果、菊池を選出するに至りました。

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