左投手は右打者が苦手か?左右のセイバーメトリクス/鳥越規央の野球視角

2017年4月27日更新

2年前からZOZOマリンスタジアムで「データで楽しむ野球観戦講座」という、イヤホンガイドを通じてお客様にデータによる解説をお届けしながら観戦を楽しんでいただく企画を行っています。ご好評につき今年から月1回ペースで、千葉ロッテマリーンズ公式行事として開催する運びとなりました。4月は5日の対日本ハム戦と、22日のオリックス戦で開催いたしました。ご来場いただいた皆様に感謝申し上げます。

2年前に初めて開催したとき、セイバーメトリクス的に興味深い出来事がありましたので、そのときのエピソードをご紹介します。2015年8月29日のロッテvsオリックス戦、予告先発はオリックス西勇輝、ロッテは左投手である古谷拓哉でした。その試合でのオリックスのスターティングメンバーは

1番 ヘルマン (右)
2番 安達了一 (右)
3番 糸井嘉男 (左)
4番 中島裕之 (右)
5番 ブランコ (右)
6番 宮崎祐樹 (右)
7番 川端崇義 (右)
8番 縞田拓弥 (右)
9番 山崎勝己 (右)

と、糸井を除いて右打者を並べてきました。当時の福良監督代行もそうでしょうが、左投手といえば右打者に弱いというイメージはあるかと思います。しかし2015年の古谷の対右、対左別の被打率を見ると

対右 0.185
対左 0.365

と圧倒的に右を抑えていることがわかります。

実際、その試合は1回表に左の糸井に2ランホームランを打たれはしましたが、打たれたヒットはこの1安打だけ。他の右打者に対してはヒットを打たれることなく、6回2失点(自責点1)のクオリティースタートを達成。試合も5-4でロッテが勝利しました。勘や経験則で組んだオーダーが結果を残せず、データが試合結果に如実に現れた事象として、セイバーメトリクス的に今後も語り継がれるゲームになりました。この企画でこの試合に立ち会えたのはとてもラッキーでした。もしこのデータをオリックスの首脳陣が把握していたら、当時売り出し中だった小田裕也や駿太を外すことはなかっただろうなと、当時の解説で語った記憶があります。

逆にデータを把握していたことで、左投手に左打者をぶつけたという例もあります。2010年の日本シリーズ第2戦でロッテの先発マーフィー(左投手)に対し、中日は左打者の野本や大島を起用する采配を行いました。当時の記者は「右のアンダーハンドの渡辺俊介と読み違えたか?」と考えたのですが、落合監督はマーフィーの対左の被打率が .287と対右の .219より悪いことに着目して2人を起用したのです。その結果、2人はシリーズ初出場ながら結果を残すことになります。

1回裏2アウト満塁の場面で8番の大島はレフトへ2点タイムリー2塁打を放ち、序盤のリードに貢献します。また6番の野本も2回の裏2アウト2塁の状況でレフトへのタイムリーヒットを放ち7-0と試合を決定づけます。結局、この試合は12-1と中日が圧勝し、1勝1敗のタイに持ち込んだのです。このようにデータに着目することで、最善のオーダーを組むことができるわけで、勘や経験則だけでなく、しっかりデータを踏まえた采配が長期的には良い結果を残すことになるのです。

では、現在の投手において、左と右の被打率が極端に違う投手はいるのでしょうか。2016年のデータで見てみましょう。

左投手の対右、対左別被打率(2016年)

規定投球回数到達の左投手を見ると、右の被打率が良いのが5人となっています。しかし、ヒットの確率は少なくても、1つのヒットで稼がれる塁の数という意味では、右打者の方に稼がれている投手が6人いることになります。そういう意味では、右打者に塁を稼がれている傾向が強いということになるのでしょう。ちなみに2015年の古谷の被OPSは

対右 0.654
対左 0.879

と右を抑えていることには違いないのですが、被OPS0.8超えというのは、あまりにも左に対する成績がひどかったということも言えるでしょう。

 最後に、パ・リーグで左キラーと称される左ピッチャーといえば、日本ハムの宮西尚生ですが、彼のデビュー以来のデータを紹介します。



このように、左に対してしっかり抑えている様子がわかります。この9年で左への被本塁打は5。パ・リーグの日本人打者被本塁打は2008年の松中信彦(ソフトバンク)以来なかったのですが、私が観戦講座を担当した4月5日のロッテvs日本ハム戦で、宮西は左打者の鈴木大地に逆転の2ランホームランを打たれてしまい、実に9年ぶり、パ・リーグ日本人打者からの被弾となりました。

なお、次回ZOZOマリンスタジアムでの「データで楽しむ野球観戦講座」は6月1日(木)対阪神戦にて「交流戦セ・リーグ徹底分析スペシャル」と題して開催いたします。

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