プロ野球史上初、猫ピッチャーが直球勝負/乙女やきゅう探訪

2017年11月1日更新

今回は東京・大手町にある読売新聞東京本社を探訪。読売といえば、ジャイアンツ関連?と思われがちですが、目的は読売新聞日曜版で大人気連載中の漫画「猫ピッチャー」(そにしけんじ 作)。プロ野球史上初の猫投手“ミーちゃん”ことミー太郎が、猫ならではの(?)珍プレー好プレーで相手チームに立ち向かうストーリーで、ミーちゃんの可愛さ、可笑しさに野球ファンだけでなく多くの人々が心をわしづかみにされています。私もその一人。たまらず読売新聞へ取材にお邪魔すると、そこで驚きの展開が・・・

読売新聞東京本社が入る読売新聞ビル。ここで「猫ピッチャー」の紙面が作られているんですね。立派な社屋に緊張しながら中に入ると・・・

ロビーで早速ミーちゃんの懸垂幕を発見。受付には、ぬいぐるみも。ミーちゃんは社内のマスコット的存在なんですね。

目的の場所に向かっていると、なんとミーちゃんが社内を闊歩しているではありませんか!今回の取材、ミーちゃん本人(本猫?)にも特別に来ていただきました。感激。

こちら(上の写真)が現在発売中の『猫ピッチャー』のコミックス(中央公論新社)と関連書籍。今回は連載スタート時から、作者の そにしけんじ先生と二人三脚で制作されている、読売新聞東京本社編集局文化部主任・西條耕一さん(ネコ派)が質問に答えてくださいました。

ミーちゃんに紹介される西條さん

― ミーちゃんにモデルはいるのでしょうか?

具体的なモデルというのはいません。ただ、そにし先生は17〜18年くらい猫を飼った経験があるので、その猫の習性を憶えていてイメージを膨らませたという感じですね。キジトラの猫だったようで、ミーちゃんと同じ白猫ではなかったそうですよ。

― やっぱり猫と暮らした経験がおありなんですね。

猫の習性がわからないとこの漫画は続けられないですから。始まって4年半くらいですけど、「10年、20年と描きたい」というのがご本人の希望です。

― ぜひ続けてください!監督など登場人物にモデルはいるんですか?

「この人はズバリこれ」というモデル像はなくて、何人かをミックスしています。監督は原監督(前巨人監督)や星野監督(現楽天野球団副会長)など、そにし先生の好きな実在の監督をくっつけて理想の上司を作り上げるような、そんなイメージで描いているそうですよ。

応接室にて。ミーちゃん立会いのもとインタビューは滞りなく進みました。

― 選手たちの参考人物は?

平野キャッチャーは特にありません。玉見ピッチングコーチは、中間管理職的な中堅サラリーマンをイメージして描いているそうです。ホームランバッターの大嶋選手は、元巨人の松井秀喜選手や日本ハム大田泰示選手あたりをイメージして。山本投手は特にいませんが、中継ぎ投手は沢山いるので、その選手たちをミックスしている感じ。柵越選手は、西武で活躍したG.G.佐藤選手と清原選手など色々なホームランバッターを合体させているという話です。

― G.G.佐藤選手!西武ファンとして嬉しいです。「猫バッター」でも「猫キャッチャー」でもなく「猫ピッチャー」だったのは何故?

やっぱり野球のゲームはピッチャーが作るところが大きいですからね。主人公に一番ふさわしくてストーリーにも幅が出ます。ピッチャーでないと長く続かないかな、というところもありますね。

― では迷った末にではなく?

最初からピッチャーでいこう!という話でした。

英語版「Neko Pitcher」は「The Japan News」に連載中

― タイヤーズに猫ファンが多いのは、モデル球団と想像できる阪神タイガースが「虎」で同じネコ科だからじゃないですか?

多少は関係あると思いますね。巨人と阪神の関係みたいなライバルチームなので、猫ファンが多いほうが面白く描ける、というのもありますね。

― ミーちゃんは何種類の球を投げられるのでしょうか?

“フォーシームの直球”を得意ボールとしていて、コースと緩急と“可愛さ”で勝負しているという設定です。あとは魔球!消える魔球もありますし、27〜28くらいの魔球が登場していると思います。

社内見学に来ていた生徒たちからも大人気のミーちゃん

― 「セロリーグ」「パセリーグ」という設定、面白いですよね。

「よくこんな面白いの考え付きましたね」と言われるんですけど、もともとはセントラル・リーグ、パシフィック・リーグで始めようかと思っていたんです。ただ「実在のリーグ名を使うのはちょっとどうか」という意見があってですね。でもやっぱり、セ・パにしないと交流戦もあるし「セ・リーグのニャイアンツのピッチャー」という設定が必要で。結局先生に「セ・なんとかリーグというのを考えて下さい」とお願いしたんです。すると何日かして、先生が食卓で「セロリーグ」って思いついて声に出したら、今度はご家族が「パセリーグ」って言って。これはちょうどいい!ということになって(笑)

校閲が行われるのは、色づけ前の原稿。同じコマでも雰囲気がだいぶ違いますね。

― ご家族のアイデアも反映されているんですね。

先生の奥様とお嬢さんが最初の読者なんです。我々新聞記者は、地方勤務の時に一度は高校野球を担当するんでそれなりに野球に詳しいんですけど、そういう人は世の中では多い訳でない。ですので、野球のルールを知らない女性でもわかるよう工夫しています。その一つとして、ご家族のお二人にモニターになってもらっている訳です。

― 具体的に、わかりやすくするために改善した例はありますか?

例えば球種の「カーブ」。野球を知らない人にとっては「ボールが曲がる」とわからないことがあるので、“ボールが曲がっているイラストのコマ”を新たに1コマ作ったりとか。

― なるほど…。そにし先生は野球経験者なんですか?

小学校、中学校までは野球をしていて、ご本人が言うには万年補欠のキャッチャーだったとか。普通の方よりは野球に詳しいですね。ちなみに大学ではラグビーをやっていたそうです。

― やっぱり。それも納得です。

それでも野球は非常にルールが難しいですから、作品を作る時に校閲部から「これはルール上、出来ない」とか「これはボークです」とかいろいろ指摘があります。猫がピッチャーをやるということ自体は荒唐無稽でありえない話なんですけど、それ以外は極力実際の野球のルール通りやろうとしています。例えばピッチャープレートから、足を前にはずすのか、後ろに外すのかで、ボークになったりならなかったりします。そういうのはかなり細かく調べて描いています。

― そこまでされているんですね。

ええ。「ルール上本当に可能なのか」とかルールブックを読んでも判断しかねることもあったので、外部の専門家の意見もきいて描いています。

貴重な後姿

― そにし先生はどこの球団ファンですか?

セ・リーグでは巨人。パ・リーグでは日本ハムがお好きです。お母様が長嶋さんの大ファンでそれで野球が好きになったところもあるそうですし、札幌生まれなので日本ハムを応援することが多いようですね。

あまり知られていないマメ知識。紙面のタイトルとミーちゃんは毎回手書きなんです。よく見ると微妙に違っていますね。

― 西條さんの思う、猫ピッチャーの“魅力”は何ですか?

私も飼ったことがあるのでわかるんですけど、猫には「これはどうやっても抑えきれない」という独特の習性が沢山あるんですよね。それをどうやって野球に活かすのか、最初は全然思いつなかったんですけど、そにし先生はうまく漫画という形にしてまとめていて「色々なアイデアがまだまだある、ネタが尽きることはない」とおっしゃっているんです。これは読者としても楽しみです!

― 最後にファンへひとことお願いします。

猫ピッチャーをきっかけに“野球の色々な面白さを幅広い方に知ってもらう機会になれば嬉しい”というのが先生の一番の希望です。漫画の設定としてはミー太郎はまだ2年目の選手なので、これからもまだまだ猫ならではの習性が抑えきれないようなプレーを色々やっていくと思います。温かく見守って欲しいなというご意見でした。

猫ピッチャーの聖地

読売新聞ビル3Fには“猫ピッチャーの聖地”と呼ばれる場所があるんです。それがこちらの「よみうりショップ」。可愛いミーちゃんグッズが沢山!新聞社の中ということで「部外者が入ってもいいのかしら…」という気持ちになるかもしれませんが心配ご無用!3Fへの直通エスカレーターで是非行ってみてくださいね。

取材/柳沢怜(TBSラジオキャスター)

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■柳沢 怜(やなぎさわ れい)
TBSラジオキャスター。大の埼玉西武ライオンズファン。ラジオ番組では過去に伊東勤氏、田淵幸一氏、張本勲氏らと共演。