球場を照らす“光の専門集団”/柳沢怜

2017年6月16日更新

今回は球場には欠かせない照明設備の会社を探訪。プロ野球の屋外球場では初めてのLED化となった横浜スタジアムの照明設備で、2016年に「第34回 日本照明賞」を受賞した「岩崎電気株式会社」です。

東京都中央区にある岩崎電気本社のショールームには、スポーツ設備や道路灯など様々な照明が展示されています。中畑清監督のサイン入り照明器具もありました。


下の写真は2015年シーズンから横浜スタジアムに導入されたものと同様のLED投光器。この大きな投光器がY形の照明塔にいくつもセットされています。従来のメタルハライドランプ投光器に比べて熱くなりにくいのですが、点灯した状態で後ろ側に回るとやはり熱を感じます。

横浜スタジアムでは黒ではなく白色バージョン

岩崎電気株式会社IoT・新規事業推進室室長の岡本孝人さんにお話を伺いました。

―球場の照明をつくる上で大変なことは?

「球場では照明設備に対して決められた位置・高さがあり、数も多いです。その条件下で、バッテリー間、内野、外野で明るさにムラがない様に『均斉度』を考えて照明の方向を考え設置することのハードルは高いですね。」(岡本さん)

岩崎電気株式会社 岡本孝人さん

―プロ野球の屋外球場で初となる横浜スタジアムのLED照明、設置期間はどのくらいかかったんですか?

「試作を作ってからスタジアム様に納めるまで、実質2年半から3年かかっています。従来のHID照明とLEDとでは“光の出方”が違うんです。そこでLED照明を作り始める前に、HIDの1500ワットと同等の明るさが出せるテスト器具が必要になるんです。それを作るところからがスタートでした。」

「シミュレーションをする際にもボール空中では止められないので、ドローンでボールをぶら下げて最大で上空50メートルまで飛ばして再現テストをしました。ドローンは受注してから用意しました。」(岡本さん)

ショールーム展示資料より

LED化後、横浜スタジアムの総消費電力は従来より50%以上も削減され、反対に空間の明るさは増しました。ちなみに前シーズンは12球団で唯一の3ケタだった横浜DeNAの失策数は同年30以上も減っています。

「減ったのは選手の実力です。ボールと照明が重なれば眩しいという現象はLEDでも無くなりません。ただ横浜スタジアムの場合、遠目では整然と並んでいるように見える照明ですが、実はその向きはバラバラなんです。LED化した時にひとつ一つの照明の向きを変えて、少しでも選手が見やすいように『光が塊になること』は避けました。」(岡本さん)

なかなか目にする機会の無い「スポーツ設備照明のカタログ」

岩崎電気は埼玉西武ライオンズの本拠地、メットライフドームの照明設備も手がけています。日本の屋外球場の場合は基本的に照明塔は6基あるそうですが、対してドーム球場の照明は天井近くにぐるりと1周。ただしバックスクリーン、選手の目線になるところ、例えば三塁から見て一塁の後ろ、その逆など照明を置いてはいけないという部分はあるそうです。

一塁と三塁の延長線上は照明が途切れる。この僅かな隙間が大きな役割を果たしている。(メットライフドーム観戦にて)


岡本さんが一番嬉しい瞬間は、手がけた球場で選手に守備でのファインプレーが出た瞬間。それは「ボールがきちっと追えているから獲れたのかも」と思えるからだとか。反対にエラーが出ればドキっとしたり、屋外球場では「球場の向きと天気の関係で不思議な明るさになることがある」と分析したり、「光と明るさの職人」ならではの野球の見方をされているのが印象的でした。

LED投光器に貼られている製品シール

私たちが野球観戦を楽しめるのも見やすい照明のおかげ。スタンドから見える場所にはどこにも書いてありませんが、今後横浜スタジアムやメットライフドームで観戦するときは「岩崎電気」を必ず思い出しますね。

取材/柳沢怜(TBSラジオキャスター)

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■柳沢 怜(やなぎさわ れい)
TBSラジオキャスター。大の埼玉西武ライオンズファン。ラジオ番組では過去に伊東勤氏、田淵幸一氏、張本勲氏らと共演。